第7節マッチレポート
後半3連続トライも、逆転ならず。
トヨタヴェルブリッツは2月4日、名古屋市のパロマ瑞穂ラグビー場でクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S東京ベイ)と交流戦で対戦した。試合は前半、10-36と大きくリードされる展開。後半に3連続トライで5点差まで迫ったが逆転ならず。34-44で敗れた。通算成績は2勝5敗。
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待望のホーム3連戦の初戦。立春を迎え、寒さも和らいだパロマ瑞穂ラグビー場だったが、勝利の春はまだ先だった。
対戦相手のS東京ベイは、引き分けを挟み5連勝と、リーグワンで最も勢いのあるチームだ。そのS東京ベイに対して、トヨタは前半で5トライを奪われた。
問題は取られ方。淡白だった。1本目は前半4分。相手キックをFBヴィリアメ・ツイドラキが蹴り返したが、キャッチした相手がカウンターを仕掛ける。SOバーナード・フォーリーが繋ぎ、wtb根塚洸雅が飛び込んだ。相手のバックスリーはスピードランナー揃い。蹴ったキックに対しての対処が遅れた。
2本目は、1PGを返した後の16分。相手陣深いところでボールをもらったSOティアーン・ファルコンが処理に迷い、ターンオーバーされたのが起点。
3本目はWTB山口修平がトライを奪い、10-14と差を詰めた直後の24分。福田健太が密集からパスしたところを、相手SHにインターセプトされた。いずれも一瞬の隙も逃すまいという相手の貪欲さが生んだトライだった。
前半のスコアは10-36。大きなビハインドを背負って迎えた後半、WTB山口に代わり、ウィリー・ルルーがピッチへ。司令塔に入った。
ルルーの本職は15番。だが南アフリカ代表キャップ83の33歳に背番号は関係なかった。
ルルーは冷静に状況を見つつ、ボールをキープ。強いランナーにボールを渡し続けた。シンプルだが、それが徐々にトヨタの前に出る勢いを生み出した。
6分、相手ゴール前でモールの最後尾についていたHO彦坂圭克が一瞬の判断でショートサイドを攻めてトライ。その4分後、ルルーを起点にボールを動かし、相手陣22㍍付近でCTBロブ・トンプソンが咄嗟にボールを拾い上げ、強さを活かしてそのまま走り切った。
14分には相手陣ゴール前ラインアウトからドライビングモール。一気に押し込んでHO彦坂が抑え、自身2本目のトライ。10分間の3連続トライで差は一気に縮まり、29-36と7点差に縮まった。
だが試合巧者のS東京ベイは24分、PGを追加して10点差に。この3点が後々効いた。
その後もトヨタは相手陣に居座って攻めるが、S東京ベイはHOマルコム・マークス、Flピーター・ラブスカフニらが密集でボールに絡み、最後の一線は越えさせない。
エリアでは上回っていたトヨタだったが、ルルーのキックパスを受けたWTBヘンリー ジェイミーがインゴールにボールを置いたのは38分。相手に巧みに時間を使われた。ファルコンのコンバージョンは外れ34-39。その後、逆転トライを狙って相手陣から攻めたものの、パスが乱れボールを奪われ、S東京ベイがトライ。34-44となり、ボーナスポイント獲得はならなかった。
FL古川聖人共同キャプテンは「前半、ボールを動かして自分たちで苦しめた。後半はシンプルに出来て流れを引き寄せることができた」
相手のフィジカルを意識しすぎたのか、前半は一人ひとりが早めにボールを動かし、逆に孤立。ターンオーバーされる場面も見られた。
Sh福田健太は「(前半は)ストラクチャーにこだわりすぎた。相手もうちを分析している。スペースがないのにサインプレーを遂行しても、相手にぶつかるだけ。目の前のディフェンスにアジャストして、スマートに戦わないと」
後半に勢いを盛り返したのは、ルルーがシンプルにトヨタの強みを当てていったから。「ウィリーのメッセージはシンプルでクリア」(福田)。だが試合をひっくり返すには、前半の失点が大きかった。
これで2勝5敗でバイウイークを迎えることに。
古川共同キャプテンは言う。
「今までだったら、前半を引きずって、後半も(前半と)同じような展開になる。切り替えて、後半自分たちがコントロールできたのが成長を感じる部分」
トヨタの強みはFWBK関係なく、徹底して身体を当て続けること。第4節の埼玉WK戦、前節の神戸S戦の後半がそうだ。それが相手の一番嫌がることでもある。「痛くないトヨタ」では畏怖の対象とはならない。
明るい話題は前半22分にトライを奪ったWTB山口修平。この日が19年に加入以来、初スタメン。ボールをもらうと、すかさずミスマッチを突いて切れ込み、身体能力の高さを証明した。前半40分の出場だったが、「次は後半も出て、アタックだけでなく、ディフェンスでも貢献したい」と意気込む。CTB、WTBをこなせる山口の目途が立てば、外国人選手の起用に幅が生まれる。
ラインアウトモールはS東京ベイに対して有効だった。HO彦坂のトライへの嗅覚も大きなアドバンテージだ。
順位は9位も、ボールキャリー、ゲインメーターは1位(Jスポーツ調べ)。強いランナーを擁することは証明されている。後は、そのアタックを得点に結びつけるゲームマネジメント。キックの使い方も重要になってくる。必要なのは、「勝負の綾をものにすること」と福田は言う。
「ターニングポイントで勝ちきれない。そこをものにしないと。今日の後半だったら、相手ゴール前(の時間)。5点差にしたのが遅すぎた(後半38分)」
次の試合(NECグリーンロケッツ東葛戦)まで2週間空く。身体を休め心をリフレッシュさせ、「当たったら痛いトヨタ」を取り戻したい。
(写真説明)
①初スタメンで初トライ。WTB山口修平
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②後半SOを務めたウィリー・ルルー
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③今季初出場のWTBヘンリー ジェイミー。インゴールでの強さは健在
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④今季初のパロマ瑞穂ラグビー場での試合。多くのファンが名前入りタオルを持って選手を応援
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