2024/02/21
2月16日のトヨタイムズスポーツは、パラアルペンスキーを特集した。7年ぶりの国内開催となったワールドカップ札幌大会に、日本の第一人者である森井⼤輝選⼿が出場。大会期間中には次世代のパラスキーヤーと交流し、競技に対する想いや、引退などについて踏み込んだ発言も。レジェンドは若手選手たちに、アドバイスだけでなく「最大のライバルでもいたい」と熱いメッセージを送った。
会場はサッポロテイネスキー場。初めて見る森井選手の生の滑りに「(チェアスキーの)サスペンションが効いている」と驚く森田京之介キャスター。本人も久々の日本でのW杯に「普段ずっと海外を回っているんですけども、日本の方に僕たちの滑りを見ていただけるのがすごくうれしい」と話していた。
初日の大回転1本目は、一つ一つのターンを確かめながらの滑りで、47秒24。雪が柔らかくて難易度が高いコースをさっそうと駆け抜けた森井選手のレースは18:20から。
2本目はタイムを縮めるために攻めた滑りを見せるが、コースの荒れていた部分に弾かれて転倒。DidNotFinish(棄権)になってしまい、森井選手は「攻めて攻めての失敗だったので。良しとして明日につなげます」と気持ちを入れ替えていた。
2日目は、前夜に降り続いた雪がやみ、フリーで滑るのには最高の条件だったのだが、大会はまさかの中止になってしまった。積もった雪を取り除いて競技のコンディションにしなければならず、雪が多くて整備できないのが理由だった。
森井選手は「なんとかリベンジをしたいと思って臨んだんですが」と悔しそう。「自分との戦い、他国の選手との戦いなんですけれども、もう1人敵がいて、それが自然です」と、スキー競技の厳しさを説明してくれた。
森井選手は「ケガをしてしまって、自暴自棄というか全てが嫌になってしまって。でもパラリンピックの映像を見た時に、スポーツをやったら昔の自分に戻れるのかもしれないと思って。チェアスキーをやろうと決意をした瞬間に、『これはリハビリじゃない。僕にとったらトレーニングだ』と意識が変わった」と振り返った。
「いつまで現役をされるかなというのが、気になります」という踏み込んだ質問も。森井選手は「いい質問ですね」と、笑顔でこう答えた。
「2026年をめどに、僕自身はパラリンピックやワールドカップにはもう出場しないでおこうかなと。下のカテゴリーの大会に出ていたいなと思っています。なぜかというと、次の次のパラリンピックに出る選手たちを、最大限自分のできる応援をして速くしてあげたいし、どんな技術でも教えてあげたいと思います。だけど、もう1つの顔は、最大のライバルでもいたい。隙あらば僕が2030年(のパラリンピック)に出ちゃうよっていう」
座談会の模様は28:26から。
大会が休息日の3日目は、次世代パラスキーヤーに森井選手がゲレンデで直接交流し、滑るたびにみっちりと細かいアドバイスを重ねた。
参加者らは「ダメなところといい滑りを比較して滑ってくれるので、分かりやすい」、「今までは(自分が)やりたい部分だけを意識していたんですけど。大輝さんが他の部分のこともいろいろ教えてくださって、それをやるとだんだん目的のことに近づいていった」と感想を話していた。SkiCampの模様ととインタビューは32:10から。
今回の取材で森田キャスターが気づいたのが、WRCなどのラリーとチェアスキーとの共通点。滑る前にコースを確認するインスペクションという時間は、ラリーでのレッキに相当するコースの下見にあたる。さらに、クルマやチェアスキーという道具は、自然を克服するためにサスペンションが重要な役割を占めている。
視聴者からも「ヤリスと森井さんが滑走対決したら、どっちが早いだろう」「まさか森井選手チェアスキー引退した後はラリー参戦?」といったコメントが寄せられた。次世代の選手たちの道しるべでありライバルでもある森井選手。今シーズンの残り試合、そしてその先の活躍にも目が離せない。
森井大輝
,パラアルペンスキー