2024/05/14

宇野昌磨が引退報告「次に熱量を注ぐ場所を探していきたい」


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引退を発表した今の気持ち、競技者として一線を退く決意をした決め手、そしてこれからについて――。

宇野はこれまでのインタビューと変わらぬ、丁寧な口調で一つひとつ語ってくれた。

引退報告


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この度現役フィギュアスケート選手を引退することとなりました。

今日まで応援してくださった皆さんに、本当に感謝しています。

また、今後はプロとしてスケートを続けていくことに変わりはないので、引き続き応援していただけると嬉しいです。

皆さんありがとうございました。

このように改めて引退を報告。そして会場に集まった多くの報道陣を前に、「これまで競技としてのフィギュアを頑張ってきた、自分の道が表れているように思うし、これだけたくさんの人たちに支えられてきたんだなと、実感しています」と想いを語った。

フィギュアスケート界をけん引


2016年からの4連覇を含む6度の全日本選手権制覇、平昌オリンピック(2018年)で個人銀、北京オリンピック(2022年)では個人銅、団体で銀メダルを獲得。さらには22年、23年の世界選手権連覇とフィギュアスケート界の一時代を築いてきた。
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5歳からスケートを始めた21年の競技生活を振り返ると「まさか僕がこういう選手になれるとは思っていなかった。フィギュアと出会って、感謝と驚きばかり」という。

それでもここまでの結果を残せた理由を「出会いに恵まれた。周りの方々が、僕が伸び伸びとできるようにサポートしてくださった」と振り返った。

競技と表現の狭間で


高橋大輔さんに憧れ、磨き続けてきた表現力。昨年9月に収録したトヨタイムズスポーツのインタビューでは、このように応えている。

もちろんジャンプの難易度が上がることは本当に素晴らしいことだと思う。

両⽅があってこそのフィギュアスケートというのを、僕がこういう結果を残せたからこそ、⾃分がやりたいスケートというものを⽬指したいと今思っている。

残っているスケート⼈⽣をかけて、僕が最初にやりたいと思ったことを、今だからこそ体現したい。

点数になりにくい部分を⼀⽣懸命練習してもそこは⾃⼰満⾜の世界。でもその先にフィギュアスケートに何が起こるのか見てみたい。

そんな想いで臨んだ2023-24シーズン、GPシリーズの中国杯、NHK杯はともに2位、ファイナルも2位。昨年12月に行われた全日本選手権こそ6度目の頂点に立ったが、3連覇を狙った世界選手権は4位だった。

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頂点に立ったのは全日本選手権だけかもしれない。だが「結果を残したいと熱い想いにさせてくれた後輩には感謝したいし、楽しかった。全力を注げる場があって良かった」と語る。

そして、「成功も失敗もたくさんあったかもしれないけど、両方等しく僕にとっては宝物のような時間だった」と振り返った。

たくさんのファンの声に…


5月9日の引退発表は多くのメディアが取り上げ、多くのファンが引退を惜しむ声や、今後の活動に期待を寄せた。

トヨタイムズスポーツの生放送中も、チャット欄には感謝や、変わらず応援し続けるコメントが多く流れた。

そんなファンの声に宇野は、「僕が全力で向き合っていた競技としてのフィギュアスケートを待ち望んでいてくれたのは、すごく嬉しい」と応えつつ、「これからも(プロとして)スケートに全力で取り組むことは変わらないので、応援してほしい」と呼びかけた。

きっかけは仲間の存在


記者から「引退を決めた時期は?」との質問には、「2年ほど前。(ステファン・ランビエール)コーチに伝えたのは、(今年の)全日本選手権が終わったタイミング」と回答。きっかけには、一緒に切磋琢磨してきた仲間の存在があった。

(2年前の)世界選手権に優勝した時に、引き続き頑張ろうという気持ちは変わりませんでしたが、ゆづ君(羽生結弦さん)やネイサン(ネイサン・チェン)の引退*があり、ずっと闘ってきた仲間の引退を聞いて、寂しい気持ちと取り残されたという気持ちがあった。

*ネイサン・チェンは現在、学業のため競技を離れている。

そこから考えるようになった。

また、引退することへの未練については、「一切ない」ときっぱり。

これから世界で闘う後輩たちに向けては、「全員がいい結果になることを望みますが、本人が楽しく、目指しているスケートを体現できる選手が一人でも多く現れるといいなと思っています」とエールを送った。

引退の先に


これからについては、「僕たちアスリートは、一つのことに全力を注いできた人間なので、その場所から変わることは本当に難しい」という。ただ、「その熱量が人一倍あったからこそトップアスリートになれたと思うので、僕も次にその熱量を注ぐ場所を探していきたい」と続ける。

一方で、もともとゲームが大好きなインドア派。これまで一心にスケートと向き合ってきたこともあり、「いろんな経験をしたいな…しなきゃな、と思っています」と苦笑い。森田京之介キャスターからの「トヨタイムズが強引に連れ出すのはありですか?」には、「そう…ですね…時間が合えば…」と、この時ばかりは歯切れが悪かった。

宇野は今後、トヨタ社員としての契約は満了となるが、トヨタはこれからの活動をサポートしていくことになっている。

トヨタでは、これまでもさまざまな形でセカンドキャリアを描くアスリートたちがいる。背景には、豊田章男会長の「アスリートへのサポートは旬な時だけ、それじゃダメ。トヨタにはプロもアマもいろんなジャンルのアスリートがいるんだから、いろんな形があっていい」という想いがある。

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宇野も「どんな時も同じように手厚く、そしてアスリートファーストの気持ちでサポートしてくださり、とても感謝しています」と応えた。

これから先、どのような道を歩むことになるのか。トヨタイムズスポーツでは、これからも宇野の挑戦を追い続けていく。

short動画では、報告を終えた後の率直な気持ちを語ってくれている。ぜひご覧ください。

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