2025/01/21
1月17日のトヨタイムズスポーツは、パラアルペンスキーを特集した。約2年半をパラ陸上に専念していた村岡桃佳選手と、シーズン開幕前の大ケガからまもなく復帰する森井大輝選手が、ふたり揃ってスタジオに出演。パラリンピックの獲得メダルは計16個の師弟コンビが、雪上へと戻るまでの道のりや想いをたっぷりと語った。師弟の絆を確認する企画でも息はピッタリ!?
2026年のミラノ・コルティナ大会に向けて、冬のアスリートにとって今季は準備段階となるシーズン。だが、冬季パラリンピックに6大会連続出場中の“レジェンド”森井選手と、前回の北京大会で金3つの“冬の女王”村岡選手にとっては、ケガやブランクからの復活を期するシーズンとなる。
27歳の村岡選手は約20年前、スキー場で会った17歳上の森井選手に先輩に憧れて競技の世界に入った。番組ではそれぞれ相手を特集する回で、ゲストとして解説を務めたことはあるが、ゲスト席に並んで座るのは初めて。
森井選手は「初めて会ったのは桃が小学生の頃。一緒に遠征に回るようになったのが高校生になって からなんですけど、いまだに年齢を言われてもピンと来ない」と話していた。
番組ではまず、パラアルペンスキーの競技について、3つのポイントに絞っておさらいした。現役のトップ選手による貴重なコメント付きの解説は8:37から。
(1)パラリンピックは5種目……スピードが出る順に「滑降」「スーパー大回転」「大回転」「回転」と、スーパー大回転と回転の合計タイムを競う「複合」
(2)カテゴリーは3つ……「立位」「座位」「視覚障がい」で、両選手はチェアスキーに乗る座位
(3)進化するチェアスキー……ひと昔前は時速80kmを超えなかったが、現在は120kmまでスピードアップ
村岡選手が陸上を始めたのは2019年の春。車いす100mを中心に競技生活を送り、東京大会では6位に入賞した。その半年後には冬季の北京大会での活躍を経て、陸上の続行を決断。冬の間はスキーに戻る選択肢もあったが、「陸上競技はコンディションを整えるのがすごく難しい。少しでも期間が空いてしまうと波が崩れます」と、パリ大会までは陸上に専念することにした。
この5年間の陸上での経験で得たものについては、「その日の調子によって走った感覚も全然変わるし、疲労のたまり具合や、ケアした後の身体の調子も本当に違うんだなって。身体の変化を繊細に感じて、逆に気にするようになったのは、自分の成長した部分でもあるかなと思います」と話す。
パリ出場を逃し、昨年9月16日が陸上ラストラン。競技後のインタビューでは号泣した。「今は走りたい気持ちもないなって思うぐらい、燃え尽きたというか、やりきったという気持ちだったので。終わったんだっていう達成感と、あとは寂しさで、涙が止まらなかったですね」と振り返る。
雪上を2年半ぶりに滑るのは「めちゃめちゃ怖かった」と村岡選手。トレーニングを積み重ねて感覚を取り戻し、森井選手も「ブランクを感じさせないぐらい、どんどんタイムが上がっていったので、僕は安心して見れました」と語る。12月に迎えたワールドカップ初戦の映像は28:57から。
W杯の復帰戦をいきなり優勝で飾った村岡選手だが、その後は表彰台の中央に立てず、悔しい想いをしている。2年半の間に周りの選手もレベルアップしていると感じており、「ずっとスキーをしてきた選手たちに比べると、ライン取りや用具の扱い方という部分では、自分の中でまだまだすり合わせができてない部分はあるので。ただ、気持ちやフィジカルは、成長して強くなったのを感じています」と語る。
一方、今季の森井選手は、夏場に取り組んだ有酸素トレーニングも効果を見せ、ノリノリで練習に取り組んでいたという。ところが11月19日、イタリアのスキー場で練習中に転倒し、滑落した先にあったネットのパイプと激突し、肩甲骨を骨折してしまった。
転倒直後、激痛を感じながらも、「指は動いたので神経はつながっている。腕が上がらないということは肩回り。腕が外れているのかなと思って、痛みの根源を調べていくと、どうも肩甲骨だ」と冷静に自己診断していた森井選手。そのままドクターヘリで病院に運ばれたが、当時スタートにいた村岡選手に対し、「寒い時にずっと待たされていたというのを聞いて、申し訳ないことをしたなと思って」と思いやりを見せる。
ケガのレントゲン写真も特別に公開。生放送中のチャット欄では、スケートショートトラックのレジェンドである寺尾悟さんが「僕も、背骨、右手首、左足首と各種レントゲンを取り揃えております」と、なぜか骨折自慢をしていた。
帰国直後は安静にしていた森井選手だったが、その後は驚異の回復力を見せ、年明けにはトレーニングを再開。「調子はすこぶるいいです」と話しており、雪上で練習を行う映像(42:21から)も公開された。
ワールドカップ前半戦はお休みとなり、2月のスロベニアでの世界選手権から復帰の予定。「この先はシナリオにないレース。でも、実際に滑ってみてフィーリングはすごくいいので、残りはしっかりと戦えるかなと思っています」と語る。百戦錬磨のベテランだけに、無理をせずに自分の調子を確認しながらギアを上げていく。
番組の終盤に突然始まった企画が「師弟の絆を確認しよう」。5つの質問に対して、2人がフリップに書いた回答が一致するかどうかを見ようという試みだ。あえて台本では知らせておらず、2人とも悪戦苦闘していた。絆の検証企画は46:40から。
「最初に交わした言葉は?」「雪山で食べたくなるものは?」といった質問に、惜しいところで回答が分かれてしまう両選手。「村岡さんが今一番欲しいモノは?」に対して、村岡選手は最近壊れた「ゴーグル」と答えたが、森井選手は「(スキー板に付ける)アルミプレート」と、自分の欲しいものを答えるというミスをしてしまう。
それでも、最後の質問「チェアスキーでより速く滑るために一番大切なことは?」では、見事に回答が一致。答えの説明も、パラアルペンスキーという競技の核心に迫る素晴らしいコメントで締めくくった。
企画は終盤で追い上げて、2問クリアの森井選手と村岡選手。別の競技や試練を経験して、再び共闘することは、お互いに良い相乗効果を生むだろう。今シーズンもこれからの追い上げに期待したい。
毎週金曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。次回(2025年1月24日)はトランポリンを特集する。TBS系列で放映された女性版SASUKE「KUNOICHI」にも出演し、話題になった森ひかる選手を取材。明るいキャラクターにも注目だ。元新体操フェアリージャパンの竹中七海さんは、アスリートキャスターとしての初仕事。ぜひ、お見逃しなく!
森井大輝
,村岡桃佳
,パラアルペンスキー