2025/03/18
3月14日のトヨタイムズスポーツは、新シーズンを迎えたスーパーフォーミュラを特集。
人材育成を目的とした新チーム「KDDI TGMGP TGR-DC」をクローズアップ、片岡龍也監督をスタジオゲストに迎え、開幕戦と第2戦の奮闘ぶりを振り返った。
若手ドライバーが思うような走りをできない状況下で、もがき苦しみながらメカニックらと話し合い、クルマを仕上げて自らも成長していく姿は、まさにヒューマンモータースポーツだ!
圧倒的なスピードが魅力のモータースポーツ、スーパーフォーミュラが過去最高に盛り上がっている。主催団体であるJRPの近藤真彦会長が「ガチの人気急上昇エンターテインメント」と表現するように、昨年の入場者数は新記録を達成した。
今年も13チーム22名のドライバーが参戦し、計12戦を戦う。7月と10月には女性ドライバー限定のレースシリーズ「KYOJO CUP」との併催を行うなど、各方面に影響を及ぼしている。
トヨタのドライバーは海外選手が増え、昨年のチャンピオンの坪井翔選手をはじめとする13名の精鋭。だが、ホンダのおひざ元である鈴鹿での開幕週は、トヨタ勢にとって厳しいレースとなった。
今年から加わったチームのKDDI TGMGP TGR-DCは、片岡監督が代表を兼任し、モリゾウ(豊田章男会長)が企画・監修。TOYOTA GAZOO Racingのレーシングスクールの校長も務める片岡監督が、育成を目的としたチームを国内トップカテゴリーに作ろうとモリゾウに相談し、チームが誕生した。
ドライバーは、28号車が昨年までKONDO RACINGの小高一斗選手、29号車が沖縄出身の平良響選手。リザーブは野中誠太選手で、結果次第では入れ替えも行われる。
今年のスーパーフォーミュラの主な変更点は、①連日開催のレースが増えてピットインのルールを変更 ②環境性能を高めたNEWタイヤ ③ピットでの作業時間に制限の3つ。これらへの対応はもちろんだが、新チームはさまざまな準備が手探りの状態で開幕戦に臨まなければならない。
森田京之介キャスターがまず取材したのは、土曜日の開幕戦。予選はホンダ勢が上位を独占する中、小高選手と平良選手は2回目のタイムアタックに進めず、後方からのスタートとなった。
選手らの手応えだけでなく、育成などについてエンジニアにも聞いた、開幕戦の予選のVTRは17:30から。
平良選手は予選では攻めすぎて、片岡監督から「1周をもっとまとめろ」とアドバイスを受けた。本人は「ドライバーがタイムを出そうと行き過ぎる失敗もあるし、逆に抑え過ぎる失敗もある。そのバランスが大事」と振り返った。
ミスを少なく「まとめる」という技術について、片岡監督は「ミスの大きさがトップドライバーほど小さい。みんな1周走ってくると何回かミスはあるんですけど、それが0.01秒の失敗なのか0.1秒の失敗なのかというのが、選手によって幅が違う」と補足していた。
ドライバーに求められるのは、速く運転するというスキルだけではない。クルマに乗って感じたことを言葉にして表現し、エンジニアにフィードバックする能力も非常に重要になる。
片岡監督は「短い時間でクルマを仕上げなければいけないので、いかに的確なコメントをするか。その感じている問題が正しいかという見極めも大事で、育成チームということもあり、ドライバーの勘違いじゃないかというようなことも積極的に指摘しています」と解説する。
開幕戦の決勝レースは、両選手ともに追い上げを見せ、序盤は順位を上げていく。ところが、小高選手はS字の激しい競り合いの末に、クラッシュしてリタイアしてしまった。平良選手も接触でフロントウィングを破損しながらも、なんとか完走することができた。
ピットでは、戻ってきたドライバーが片岡監督と真剣な表情でコミュニケーションを取る場面も。悔しい気持ちを抑えながら、カメラの前で敗因を冷静に分析してコメントを絞り出す両選手。このインタビューの経験も、将来の成長の糧になるはずだ。
モリゾウや近藤会長が出席したオープニングセレモニーから始まる、開幕戦の決勝の模様は30:15から。
日曜日の第2戦は、予選前のピットの様子から決勝後のコメントまで、映像を一気にまとめた。両ドライバーの表情の変化や率直な言葉にも注目していただきたいVTRは38:27から。
前日にクラッシュした小高選手の28号車は、夜間に規定の時間を4時間オーバーして修理した。今年から働き方改革の一環で、ピットへの立ち入り時間はシーズンで計12時間まで延長が認められている。
貴重な時間を費やして申し訳なさそうな小高選手と担当メカニックの間でも「直すから大丈夫だよ」としっかりコミュニケーションを取っていたそうだ。
第2戦も前日と同様に上位進出は厳しかったが、2台とも無事に完走。ただ、途中で両選手が順位を争う場面があり、レース後には「あの小競り合い、いらない」と、穏やかな片岡監督にしては珍しく厳しい言葉も飛び出した。
小高選手は「チームも自分も全体として、ペースを上げていかないと、上の方で戦えない。課題はいっぱいです」、平良選手は「今回得たデータをしっかり整理整頓して(次戦の)もてぎに挑みます」と話していた。
第2戦で2位に食い込んだのは、前年王者の坪井選手。前日にレースを経験したことで「新しい道が見えた」と会見ではコメントしていた。ホンダ勢との差が大きかったからこそ、2戦目では通常のセオリーを外して、新しい組み合わせを大胆にトライした結果、活路を見いだせたという。片岡監督は「冒険しているとは言っても、坪井選手が持っている感覚やデータがあるからこその成功」と分析していた。
若手ドライバーが、坪井選手のようなトップドライバーとの差を埋めるにはどうすればいいのか。片岡監督は「皆さん、その時代ではライバルに勝ってきているんですけど、上に行けば行くほど、そういった人たちが集まっています。その壁に当たることによって、足りないものの気づきを素直に受け入れる気持ちと、言われたことを理解してどれだけ一生懸命取り組めるか。環境がどんどん厳しくなることで人は鍛えられるので、そこで負けずに行ききれるのかが選手の差になってきます」と話す。
「感じる力・伝える力」の教え方について、視聴者からの質問を受けた片岡監督は「とにかくしつこく」と答える。「何をその時に感じて、何をしたかも聞きます。そして、その一生懸命伝えようとしていることに対して、『自分はこのように感じたけど、それは正しいのか』と聞く。なるべく本人の言葉を引き出し、それに対して分かりにくかったことも教えてあげる。繰り返すことでしか鍛えられない」と説明した。
スーパーフォーミュラは残り10戦。最終戦は再び鈴鹿サーキットで迎える。さまざまな苦悩を乗り越えた若いドライバーたちが、どのような表情で帰ってくるのか。彼らの成長を感じながらレースを楽しみたい。
YouTubeで毎週生配信しているトヨタイムズスポーツが、この春はスペシャルな3連発をお送りする。
【SP第1弾】3月19日(水)13:00~生配信 宇野昌磨 https://www.youtube.com/watch?v=QBlgKNYszSM
【SP第2弾】3月21日(金)11:50~生配信 新人アスリート特集
【SP第3弾】3月24日(月)11:50~生配信 張本智和
3月19日の「Move 宇野昌磨、再始動。」では、プロフィギュアスケーター宇野昌磨さんが自身のセカンドキャリアに関して発表した。21日は、トヨタに入社するハードルの豊田兼選手、パラ水泳の南井選手、パラ陸上の石山大輝選手ら、トヨタに入社する新人アスリートを特集。24日には卓球の張本智和選手からも報告がある予定。ぜひ、お見逃しなく!
GAZOO