2025/04/30

"1440"で世界選手権8年ぶりの金メダル、モーグル 堀島行真 の戦略と決断


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4月25日のトヨタイムズスポーツは、フリースタイルスキー・モーグル世界王者の堀島行真選手を特集した。

世界選手権の種目別モーグルで8年ぶりの金メダルを獲得し、9カ月後に開幕するミラノ・コルティナ大会への期待が高まる堀島選手。凱旋インタビューでは、大技「コークスクリュー1440」に磨きをかけ続けた今シーズン、その集大成となる世界選手権の決勝直前での決断について語った。

優しい人柄そのままの柔らかな語り口調に秘められた、オリンピックに向けた冷静な戦略とは?

堀島選手に30分超の凱旋インタビュー


60個のコブのある雪の急斜面を滑り、2回のエア(20点)とターン(60点)の技術、タイム(20点)を100点満点で競い合うモーグル。男子で世界トップ争いを続けているのが、2022年の北京大会の銅メダリストで、昨シーズンのW杯で種目別モーグル年間チャンピオンになった堀島選手だ。

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今季の堀島選手を振り返ると、シーズンを通して戦うワールドカップの前半はなかなか表彰台に上がれなかったが、後半戦に盛り返して総合2位。そして最後の大一番となる世界選手権では、種目別モーグルで圧倒的な強さを見せて優勝した。2人の選手が同時に滑る種目別デュアルモーグルは準決勝で負傷したために、決勝に進出したものの全力で滑らないことを選択し、銀メダル。惜しくも2冠を逃してシーズンを終えた。

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帰国した堀島選手に、森田京之介キャスターが根掘り葉掘りインタビューを敢行。話に相づちを打ちながら、難しい質問にも丁寧に答える堀島選手の誠実なキャラクターが伺える。約34分にまとめたロングインタビューは8:42から。

新たな自信になる金メダル


最初にあいさつ代わりに金メダルを見せてくれた堀島選手。世界選手権を制するのは、19歳だった2017年に初優勝して以来となる。

「しっかりとそこに照準を合わせて獲れたというのが、いきなりバンと行って獲れた8 年前とは違い、新たな自信になる金メダルだと思います。当時はうれしかった反面、2018年の平昌大会に優勝できる自信もなかった。(平昌ではメダル獲得ならず) 今またミラノ・コルティナを迎えた前年で優勝して、平昌で失敗したリベンジという気持ちで迎えています」

北京大会での銅メダルを経て、昨年はW杯で種目別の年間優勝を果たした。今シーズン取り組んだのが、第2エアを跳ぶときに、難易度の高いコークスクリュー1440(フォーティーン・フォーティー)に挑戦し、その完成度を上げることだ。

「さらにレベルを上げて総合優勝を目指してはいたんですけども。それよりもミラノを目指すうえで、1440にしっかり毎試合チャレンジしていくことを一番の目標としてやっていました。もちろん勝ちたいという思いはあったんですけど、経験値をしっかりと貯めることに重きを置いたので」

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1080から1440へ、シーズンを通した挑戦


コーク1440は、身体をコーク軸(斜め軸)に傾けながら空中で 4 回ひねる大技だ。1440の由来は、360度×4回転=1440度。昨シーズンまでの堀島選手は1080(3回転)にとどまっていたが、1回転を増やした。スローで4回転を捉えた映像は19:41から。

「その技をやっていない選手よりも得点が2点か3 点ぐらい上がっていくので、アドバンテージになるかなと。しっかりとエアで得点を稼ぐことで、ターンやスピードを少し抑えてみようとか、駆け引きができるようになる。その戦略を組むために、この武器を持っていることが大事だなと、取り組み始めました」

シーズンオフは、練習でこの1440を100回成功させることを目標に置き、成功率も少しずつ高くなっていった。だが、完全に自信が持てるようになる前にシーズンが開幕し、チャレンジは続いた。

「最後の失敗」で掴んだ成功のコツ


W杯では3戦目以降、表彰台を外す状態が続いた。「これは当初思っていたチャレンジに100%フォーカスしてやっていけば、総合優勝が取れなくても良いシーズンになるんじゃないかという気持ちではありました」と、ある意味で気持ちも吹っ切れていた。転機となったのは、6位になったカナダでの大会だった。

「その試合での失敗が、最後の僕の失敗なんです。その6位の時に起こった体の向きが、絶対に失敗する向きだっていうのが分かったので。そこに絶対に入らないように常にやっていたら、成功の方向に転がっていくようになりました」

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次戦のアメリカでの大会では、モーグルとデュアルモーグルの両方で優勝。後半戦は快進撃が続き、W杯の総合順位も2位に盛り返した。

必殺技の封印を解いた、直前での決断


実は世界選手権では1440を封印する予定だったという。一発勝負の大事な大会では、リスクを減らすため、3回転にして完成度を高めた状態で臨み、それでも確実に勝てるというイメージを思い描いていた。

「ところが、天候が良くなくて1日ほぼ練習できなかった影響もあって、思い描いた『ここだったら世界選手権で勝てる』というところまでたどり着いていなかった。その部分をどうやって埋めるかって考えたときに、自分の武器である1440を使ったらどうかと。前日の夜は寝ながら考えて、朝に決めました」

堀島選手が世界選手権での決断を語ったのは27:08から。

日本代表として「ジャパングラブ」に挑戦


これまで堀島選手にとって大きな壁となり立ちふさがってきたライバルが、カナダのミカエル・キングスベリー選手。世界選手権では、この絶対王者に全ての採点で上回ることができた。

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「この差を埋めるためには、キングスベリー選手も1440をやらなきゃいけないと思うだろうし。そこをやってきたときに僕もどう回っていくか、その駆け引きが今後も行われていくので」

来シーズンに向けては、タイムとターンの点数を上げるための練習に取り組んでいく。エアに関しては、板を掴む技の一つ「ジャパングラブ」をコークスクリュー1080に取り入れて、第1エアで挑戦する予定。日本代表として自信を持ってオリンピックを戦うつもりだ。

会場で優勝も経験済み、パパとして臨むオリンピック


インタビュー中に子どもの話になると、堀島選手はこの日一番の笑顔を見せていた。遠征中は毎日テレビ電話をしているため、お子さんは電話の音が鳴ったら「パパ!」と反応するそうだ。

ミラノ・コルティナ大会は来年2月6日に開幕し、男子モーグルは2月10日から。会場はW杯で経験し、モーグル優勝という結果も残した。「写真や自分の記憶に収めているので、スタートからの景色も鮮明ですし、毎日のようにイメージトレーニングして向かっていきたいと思います」と語る。

今回から世界選手権やW杯と同様に、デュアルモーグルの種目が増え、メダルのチャンスは2回になった。もちろん2冠も十分狙える堀島選手。まずは全治2カ月のケガをしっかり治して、順調に大舞台へと臨んでほしい。

森田キャスターがニュル出張、MCの席に竹中七海アスリートキャスター


今回のMCは、森田キャスターがドイツに出張中のため、竹中七海アスリートキャスターが代役を務めた。前日から緊張していたそうだが、自身の新体操での経験を踏まえて「堀島選手の自分で組み立てて決断する力もすごいなと思いました」とコメントするなど、念願のメインMCをスムーズにこなした。

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生放送中のチャット欄では、視聴者から「竹中さんの声、とても聞きやすいです」と、竹中キャスターに好反応。森田キャスターも早朝のドイツから、堀島選手のインタビューVTRをセルフ解説して番組を盛り上げた。

ちなみに森田キャスターの出張先は、クルマ好きの聖地・ニュルブルクリンク。全貌が後日明らかになる取材映像の一部は2:08から。

毎週金曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。ゴールデンウィーク中は1週お休みをいただき、次回(2025年5月9日)は、愛媛県で行われた日本パラ陸上選手権を特集する。社会人として初の出場となる石山大輝選手は、T12(視覚障がい)100mで日本新! やり投の高橋峻也選手、短距離の石田駆選手も活躍を見せた。今回とは逆に、竹中さんが現地取材、帰国した森田キャスターがメインMCを務める。ぜひ、お見逃しなく!

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