2025/08/27
8月22日のトヨタイムズスポーツは、外洋ヨットレースを特集した。
一人乗りヨットで大西洋を横断するレース「ミニトランザット」に挑む高原奈穂選手が、スタジオに生出演。外洋ヨットレースの魅力や、ヨットの上での生活、競技を始めようと思った理由などをたっぷりと聞かせてくれた。
天候や寝るタイミングも自分ひとりで判断し、風の力だけを使って7500km先のゴールを目指す過酷なレース。日本人女性として初めての挑戦を応援しよう!
さまざまなスポーツをこれまで紹介してきたトヨタイムズスポーツだが、今回の競技は初めて耳にする人も多いはず。陸が見えないような海域を航海する「外洋ヨットレース」だ。
陸のモータースポーツにたとえると、ローイング(米川志保選手)が舗装の行き届いたサーキットを走るレース、セーリング(岡田奎樹選手)が時に荒れた路面を走るラリーなのに対して、 外洋ヨットレースはそのスケールの大きさがダカールラリーに似ている。約25日かけて7500kmを航行するという規模の面でも近い。(※ダカールラリー2025は15日間で7759kmを走行)
この夏新しくトヨタアスリートに加わった高原奈穂選手は、レースがスタートするフランスに拠点を置いて生活している。このたび帰国したのを機にスタジオに迎え、「地球を感じるスポーツ」「高原奈穂はこんな人」「大西洋横断レースがスゴイ!」という3部構成で、外洋ヨットレースと高原選手の魅力を深掘りした。
外洋ヨットレースを一言で表現すると、「地球を感じるスポーツです」と高原さん。見える景色は海と水平線、聞こえるのは風と波の音。風が強い時は最高で時速32kmを出せるが、風がない時はほとんど進めないと話す。
「気象の大局を考え、船と会話をしながらやっている感じです。船が私の命を守ってくれて、私が船を守らないといけないので、船の状況をよく観察して、もうセール(帆)を変えた方がいいんじゃないかとかを見極めながらやっています」
高原選手が3連覇した「外洋ダブルス日本選手権」は、和歌山市を出発し、紀伊半島をぐるっと回って愛知県の蒲郡市までの約370kmを、1日半から2日間くらいで走る行程。フランスで行われる「ミニ・カルバドス・カップ・コース3」(下図)は約900kmのコースで、昨年は高原選手が4日目にフィニッシュして3位に入賞したが、出場した18艘のうち完走したのは8艘だけという厳しいレースだった。
「インターネットを持ってないので、周りにどの船がいるのかもよくわからない状態でレースをしていて。船に積んでいるセンサーで近くにいる船を見ることができて、最後の段階までどれくらいの順位なのかがよくわかっていなかったんです。だから、すごくメンタルだと思います。見えないけど、自分のベストを尽くし続けるということなので。『私だけ取り残されちゃったかな』という時もありますが、(自分を)奮い立たせながら進んでいきます」
船の上で生活する選手には睡眠や食事が必要となる。睡眠を取りたい際には、進む方向を設定できるオートパイロットの機能を使って、自動運転で船を進ませるそうだ。
「寝るといっても、30分40分が最大なんです。もしかすると風向きが大きく変わって、セールを変えたりしないといけなかったりするので。なので、昼間も寝ています。ずっと寝て起きてセールをチェックしてを繰り返しています」
食事は、船の中でお湯を沸かすことができるため、簡単に食べられるレトルトが中心。疲れた時はお米などの日本の味に助けられているが、焼きたてのピザやポテトが恋しいという。
森田京之介キャスターが気になっていたのは、船上での孤独との戦い。高原選手は不安を紛らわせるために、お菓子を食べたり、スピーカーで音楽を流したりしているそうだ。孤独ではないことを感じさせてくれるイルカが並走するシーンのVTRは28:24から。
高原選手は、3歳の時に家族と初めてのクルージングを体験。慶応義塾大学のクルージングクラブに入部して、競技の世界に足を踏み入れた。「先輩が1人で部員をすごく探していたので、私もヨット好きだし、入ってもいいかなと思って」と振り返る。
卒業後は銀行に勤めながら有給休暇などを利用して、外洋ヨットレースの準備や修行を続けてきた。現在は転職先で休職して、ヨットレースが盛んなフランスのロリアンという街からレースの世界に挑んでいる。
「私がすごく衝撃を受けたのは、フランスの女性セーラーたちが自分でセーリングプロジェクトを立ち上げて、夢を持ってメッセージを発信しながら、すごく輝いているなと思いました。人間として私もこんなふうになれたらいいなって思ったのが、すごく強いインスピレーションでした」
本場のフランスで情報収集や船の準備を行い、現地の新聞にも紹介された高原選手の経歴やプロフィール紹介は29:51から。
高原選手が出場する大西洋横断レース「ミニトランザット」の「ミニ」とは、船の大きさを意味する。全長6.5mで、重量は約1トン。外洋ヨットレースの選手にとっては登竜門的なレースで、ここから世界一周などの大きなレースにステップアップしていく。
「このレースがやりたいと思って、3〜4年頑張ってきたので、スタートラインにまず立てたところがすごく感謝、かつ楽しみです」と高原さん。日本人女性として初めての挑戦となるが、「男女のカテゴリー分けもなくて、本当に国籍とか性別とか関係なく、フラットな競技なんだなと感じています」と話す。今回は60代の参加者もいるそうだ。
フランス本土を出発してカナリア諸島(スペイン領)を経由し、ゴールとなるカリブ海のグアドループ(フランス領)までの距離は7500km。合計25日間かけて走破する想定で、インターネットの使用は禁止。GPSやラジオからの気象情報を頼りに、完走かつ他の選手に先着することを目指す。
「早く目的地に到着するためには、早く走るということと、早く走れるコースを選ぶこと、船を壊さずに走り続けることが大切になってきます。特に早く走れるコースを選ぶのが大切で、風がなくなってしまったら、リードしていても全ての船に追い抜かされてしまうことが起こります。気象をしっかり理解して計画的に走っていく力が(必要です)」
高原選手がフランスに渡ってからの2年間でどんな準備をしていたかを、現在の所属先である霞ヶ関キャピタルがまとめた映像は、56:54から。
9月21日にスタートする「ミニトランザット」に向けて、壮行会も開かれた。同級生や友人たちが口を揃えて語っていたのが、高原選手の「行動力」。夢を実現するために突き進む姿は、学生時代から際立っていたという。
「高原奈穂を応援する会」の代表発起人を務める鈴木寛さん(東京大学教授)は、「7500km横断なんですけど、実際の距離でいくと、たぶんその倍ぐらい。ヨット(の走行)はジグザグしながらなので、もうとんでもないこと。とにかく元気で、そして海をとことん満喫して、奈穂さんしか見れなかった景色を、僕たちにまた共有してほしいなと思います」とエールを送っていた。
ゴールした先にどんな世界が広がっているのか。「それが想像つかないところが楽しみ」と高原選手は笑顔で答え、放送の3日後には日本を旅立っていった。地球の裏側から、偉大な挑戦を見守ろう!