2026/02/03

火の玉が飛び交うような白熱の戦い。その舞台裏では、“心温まる交流戦”が繰り広げられていた。トヨタ自動車がタイトルパートナーとして協賛する「TOYOTA presents 第27回日本ボッチャ選手権大会」が、1月17日、18日に愛知県豊田市のスカイホール豊田で開催された。国内トップレベルの選手たちが集結した大会は、18日に最終日を迎え、その同日に市民とトヨタアスリートが交流する特別な大会「第1回ボッチャTOYOTA-CUP」が行われた。
トヨタカップには、トヨタ社内のHUREAI活動(人間関係諸活動)から3チーム、トヨタループスから1チーム、豊田市ボッチャ協会が募集した4チーム、そしてトヨタアスリート(現役選手・OB)による4チームが参加。計12チームがA〜Dの4リーグに分かれてリーグ戦を実施し、各リーグ上位2チームがトーナメントへ進出する形式で王者を決めた。従業員、市民、アスリートが垣根なく競い合う光景は、ボッチャならではの魅力を色濃く映し出していた。

そもそもボッチャとは、年齢や性別、障害の有無にかかわらず、誰もが一緒に競技できるスポーツである。白い目標球(ジャックボール)に向かって赤・青それぞれのボールを投じ、どれだけ近づけられるかを競うシンプルなルールながら、相手の意図を読み切る戦略性が問われる。ボールを投げることが難しい場合でも、ランプと呼ばれる勾配具を使って参加できる点も特徴だ。パラリンピック正式種目としてクラス分けが行われる一方、トヨタカップのような場では、その枠を越え、「同じコートで、同じ1球に向き合う」体験が生まれていた。
トヨタがボッチャを推進する背景には、明確な意思と継続的な取り組みがある。パラスポーツ支援を通じて「共生社会」の実現を目指すトヨタにとって、ボッチャは、スポーツの力で多様性への理解を深め、誰もが夢に挑戦できる社会を体現する存在だ。その根底には「Mobility for All」という理念がある。移動の自由にとどまらず、挑戦の機会や、人と人とがつながる場を広げていくこともまた、トヨタが考える“モビリティ”の一つである。

今回のボッチャ選手権およびトヨタカップでプレゼンターを務めた、トヨタスポーツ推進部の橋本正夫部長は、その意義をこう語る。「誰もが平等にスポーツを楽しめ、そこから自然にコミュニケーションが生まれる環境を、私たち自身がつくっていかなければならないと考えています。会社としても、そうした価値観を大切にしながら、協賛という形で地域貢献につなげていきたい。その想いで、この取り組みを続けています」。さらに、橋本部長はトヨタアスリートに対する期待にも触れた。
「ボッチャを通じて、まずは“楽しむこと”、そして“見て何かを感じること”を大切にしてほしい。その感動が、次は自分たちのプレーや行動として表れていくことを期待しています。また、このような機会を通じて、市民の方々やトヨタの従業員と触れ合い、近い存在として感じてもらうことが、応援されるきっかけとなり、頑張るための糧にもなる。だからこそ、これからも積極的に参加してもらいたいですね」

その言葉を体現するかのように、存在感を放っていたのが、昨年の東京2025デフリンピック・男子円盤投で金メダルを獲得した湯上剛輝である。大きな体躯からは想像できないほど柔らかな雰囲気で参加者と向き合い、自然と人の輪をつくっていく。その姿が、トヨタカップの盛り上がりに確かな熱を加えていた。
湯上はボッチャについて、率直な言葉を口にする。「これまでも何度かプレーしていて、面白さは分かっていました。今回も本当に楽しめたのですが、結果は見事に完敗でしたね」と笑顔を見せる。「一投一投で状況が大きく変わるのが、ボッチャの難しさであり面白さ。円盤投とはまったく違って、僕は“ぶつける”“弾く”“近づける”くらいしかできなかった。次はもっと戦略的に戦いたいです」。競技者としての視点から、ボッチャの奥深さを実感していた。
さらに湯上は、トヨタアスリートとしてこの場が持つ意味にも触れる。「トヨタという会社は、チームワークをとても大切にしている。その中で、こうしたイベントを通じて他競技のアスリートと交流できるのは、すごく貴重な時間です」。競技やシーズンの違いから、普段は顔を合わせる機会が限られているというが、「スポーツという共通点を持つ僕らが手を取り合い、市民や従業員のみなさんと触れ合いながら、スポーツの楽しさや素晴らしさを社会に伝えていきたい」と語る。その言葉には、競技を越えた役割への自覚がにじんでいた。

一方、異なる魅力で会場を和ませていたのが、昨年の東京2025世界陸上・男子400メートルハードルに出場した豊田兼である。リーチの長い腕から放たれるボールは、周囲の期待を背負いながらも思い通りの結果にはつながらない。それでも、その一投一投に笑顔がこぼれ、参加者との距離は自然と縮まっていった。
慶應義塾大学を卒業後、トヨタに所属して臨んだ昨シーズンを、豊田は「思うようにはいかなかった」と振り返る。それでも、「さまざまな競技の選手と横のつながりを持てることや、会社として温かく応援してもらえる環境が、自分のモチベーションにつながっています」と語り、支え合う社風に確かな手応えを感じている様子だった。
ボッチャへの挑戦について問うと、返ってきたのは率直な感想だった。「想像以上に難しかった」。フランス人の父を持つ豊田は、幼少期にフランスの国技・ペタンクに親しんできたという。「ルールは似ている部分もありますが、まったくの別物でした。繊細な一投で流れが大きく変わる。だからこそ、次はしっかり練習してから挑みたいですね」。その言葉からは、競技への探究心と、ボッチャの奥深さに触れた実感が伝わってきた。

トヨタカップが行われたサブホールの一角に設けられたBoccia Parkでは、ボッチャやロービジョンサッカーなど、パラスポーツに触れられるさまざまなアクティベーションが展開されていた。会場には家族連れや子どもたちの姿も多く、競技を「観る」だけでなく、自ら「体験する」光景が随所に広がっていた。ボッチャ選手権決勝でトヨタ従業員の子どもとしてエスコートキッズを務めた駒本唯起さんも、「ボッチャを2回体験して、ボールの投げ方が難しいと感じたけれど、とても楽しかった」と、その魅力に引き込まれた様子だった。
一方、メインホールで行われたボッチャ選手権では、BC2男子で杉村英孝が2連覇を達成した。王者は大会を振り返り、「若手の選手がどんどんレベルを上げてきている。打倒・杉村、打倒・廣瀬(隆喜)という気持ちを強く感じる大会だった」と語る。「そこに負けたくないし、壁として迎えたい。自分自身もさらにレベルを上げ、優勝を積み重ねていきたい。強い選手がいるからこそ、それがモチベーションになる」。トップを走り続ける覚悟と、次世代を見据える視線。その言葉は、トヨタによるボッチャ支援の積み重ねが、確実に競技の未来へとつながっていることを静かに物語っていた。


逢澤崚介(硬式野球部トヨタレッドクルーザーズキャプテン)

福井章吾(硬式野球部トヨタレッドクルーザーズ副キャプテン)

佐竹功年(ミスター社会人野球 硬式野球部トヨタレッドクルーザーズ副部長)

鎌田優希(女子ソフトボール部トヨタレッドテリアーズ)

伊波菜々(女子ソフトボール部トヨタレッドテリアーズ)

髙橋花菜(スケート部)

石井桜汰(スケート部)

山本聖途(陸上 棒高跳)

豊田兼(陸上 ハードル)

湯上剛輝(陸上 円盤投)

高橋峻也(パラ陸上 やり投)

石田駆(パラ陸上 短距離)










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