2022/06/27
6月22日に配信されたトヨタイムズ放送部は、ラグビー部「トヨタヴェルブリッツ」を特集した。若手のリーダーとして期待される福田健太選手をゲストに迎え、今シーズンのチームが遂げた進化を解説。キャプテンの姫野和樹選手や世界的名将のインタビューから、ビジネスにも通じる組織づくりやリーダー像について解き明かす。
2022シーズンのヴェルブリッツは、10勝6敗でリーグ5位。あと一歩のところでプレーオフ進出を逃した。新型コロナウイルスの影響で中止となった4試合はいずれもホームゲームで、なかなかリズムをつくれずに難しいシーズンとなった。
だが、シーズン終盤になり、来シーズンに向けての光が見えてきた。4月16日からの3連勝を、福田選手は「チームの士気が高まっているのを実感できました。試合をやっていて楽しかったし、自分たちの強みを出せた」と振り返る。
何がヴェルブリッツを変えたのか?放送部では、その秘密を探るべく2人のキーパーソンを中心に取材した。1人は昨年ニュージーランドのハイランダーズに加入し、海外での挑戦を果たしてきたキャプテンの姫野和樹選手。もう1人は、ディレクターオブラグビーを務めるスティーブ・ハンセン氏だ。
今年のチームのターニングポイントについて、姫野選手は「スティーブがチームに合流してからだと思います。それまで細部までこだわっていなかった部分や、チームの理解度やスタンダードを引き上げてもらって、チームとしても良い結果を得られるようになり、自分も成長を感じた」と語る。
ハンセン氏は、オールブラックス(ニュージーランド代表)のコーチとしてワールドカップを連覇した世界的名将。ヴェルブリッツで現職に就任したのは2019年の年末で、コロナ禍で入国できずにリモートでの指導が続いていたが、今年に入って対面での直接指導ができるようになった。
スティーブ・ハンセン
ミーティングでやったのは、チームの気持ちを一つにすることです。全員が同じ方向に向かうようにして、今やっていることがうまくいってないという事実に目を向けることを、まず明確にミーティングの中でしました。そういう事実を受け入れない限り、チームは変わらないと思っていました。
チームが上手くいっていないときは、チームが一つになるより、小さなグループに分かれていく現象がよくあります。我々のチームも6つぐらいのグループがありましたが、これを機会にそういった真実に目を向けて、一つになろうとミーティングで伝えました。一つになれないと、自分たちが求めている結果はついてこないと思いました。
スティーブ・ハンセン
チームエナジーに対してチーム内でどういう態度を示すのか、どう行動するのかによって、チームの雰囲気が非常に変わってくると思います。
チームエナジーに対して、あなたたちのことを本当に大事にしているということを、日々行動で見せることを意識してきました。そうすることで、チーム全体が一体感を持つことになり、それぞれのことを思いやることによって、より強いチームになってくると思います。
大事なことは、あなたたちは本当に価値がある人間だということ。それを持って接することだと思っているので、そこを見せることによって、彼らは自信がみなぎり、自信を持ったプレーがチーム全体の向上につながると信じています。
インタビューVTRに登場した彦坂匡克選手は、チームエナジーの役割について「次の週のメンバーセレクションに選ばれるように頑張っていこうぜ、チーム一つになって頑張っていこうぜ、みたいなところはあります。スティーブが来てから、Aチーム対チームエナジーという時間をより多く作ってくれたので、チームに貢献しているのを感じることができ、すごくいい循環だなと思いました」と話していた。
「チームエナジーがいてくれるからこそ、試合に勝てる」と語る福田選手も、昨年まではチームエナジーの立場だった。「このジャージを着て出る以上、チームエナジーの分の思いも背負っているので、恥ずかしいプレーはできないという思いは強くなりました」と熱く語る。
福田選手は「チーム全員で戦わなければいけないのがラグビー。個人のスキルを磨くのはもちろんなんですけど、そのスキルを発揮するためには、周りの14人がしっかりスペースを作ることや、それに至るまでのチームエナジーの存在。そういう全てに掛かっています」と解説。
森田京之介キャスターは「会社という組織だって、全員が同じ方向を向かないといけない、かつ個のパフォーマンスを高めようと努力して一つの方向に向かっていくことが大事。そんなチームづくりというものを、福田さんの話を聞いて感じました」と自身の立場に置き換えていた。
視聴者のコメントでも「チームエナジーの考え方は、いろんなスポーツ、部活にも応用してもらいたい」「2軍とか補欠とか言われるより絶対モチベーションアップ」など、ヴェルブリッツのチームづくりは多くの人に新たな気づきをもたらしたようだ。
福田選手は「自分が置かれている状況を、その悔しさを押し殺して、今自分がこの瞬間に何をしなきゃいけないかというのは、どのスポーツやどの分野にも通じることだと思います」と見事に締めくくった。
プレーオフ進出を懸けた最終戦が不戦敗だったこともあり、来シーズンへの選手やファンの思いは特別なものがある。福田選手は「チームとしても良い方向に向きはじめているので。本当に楽しみ」と意気込む。
さまざまな悔しさをエナジーに変えて、未来へと前進を続けるヴェルブリッツ。そのチームづくりや試合でのプレーからは、仕事や普段の生活でも共感できるようなヒントが見つかるに違いない。来年はきっと、スタジアムでもみんなで応援できるはず!
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