2025/02/18
2月14日のトヨタイムズスポーツはカーリングを特集した。女子日本代表として2大会連続でオリンピックメダルを獲得中のロコ・ソラーレから、吉田知那美選手がスタジオに生出演。先生役を務め、ルールや動作などの基本をきめ細かくレクチャーした。日本選手権の試合を振り返り、局面での駆け引きについても分かりやすく解説。カーリングを深掘りしすぎて、生放送は前代未聞の90分超えを記録したが、知那美選手は笑顔を絶やさず、まだまだ話し足りない様子だった。
ロコ・ソラーレが平昌大会で銅、北京大会で銀メダルを獲得し、冬季オリンピックの花形種目の一つとして人気のカーリング。来年のミラノ・コルティナ大会を前に、早くも注目を集めている。2月初めに横浜でおこなわれた日本選手権の会場は連日満員で、これまで以上の熱の高まりを感じさせた。
日本選手権は3位に終わったロコ・ソラーレだが、9月におこなわれる日本代表候補決定戦への出場権を獲得。SC軽井沢クラブ、フォルティウスとの三つ巴の争いに向けて、知那美選手は「3チームともそれぞれ違った覚悟があるので、どのチームが一番オリンピックに行きたいかなんて比べられるものではないと思っています。いかに自分たちに集中できるかがキーポイント」と語った。
今回のスタジオ出演について、「カーリングって『簡単そうに見えるね』って言ってもらえるのもいいことだなと思うんですけれど、今日はもう少し深掘りして、実はこんなことを考えてカーリングをしているだったりとか、ちょっと難しいところもあるんだぞっていうところを伝えられたら」と話していた。
特集のスタートは、オホーツク海の風景から。ロコ・ソラーレの本拠地がある北海道北見市常呂町を森田京之介キャスターが訪れた当時は、まだ流氷を見ることはできなかった。
代わりに森田キャスターは、知那美選手がアルバイトをしたことのあるカフェで「流氷ソーダ」を堪能。知那美選手が勤務するネッツトヨタ北見の北見店では、上司から普段の仕事ぶりなどを取材した。常呂町での取材の模様は15:45から。
最後に訪れたのは、ロコ・ソラーレの練習拠点。リンクの広さに驚く森田キャスターは、知那美選手に対面すると、「(ストーンを)投げてハウスの中に入れたい」とリクエスト。目標を叶えるため、知那美選手が指導することになり、生放送中のチャット欄では「マンツーマンで教わるの、羨ましい」と視聴者がコメントしていた。
森田キャスターへのカーリング指導のVTRの前に、知那美選手は注目してほしいポイントを説明していた。以下の5つのポイントをVTRを見ながらチェックして頂きたい。VTRは22:55から。
「カーリングは片足だけ○○○」
「私たちは○○におびえている」
「○○しなければカーリングではない」
「氷の表面には○○○がある」
「私の得意技は○○○○○○」
滑る姿勢、ブラシを使ったスウィープ、ストーンの投げ方などを丁寧に教えた後は、さっそく実践へ。
森田キャスターの1投目は力が全然足りず、知那美選手が懸命にスウィープしていたが、ハウスのはるか手前で力尽きた。森田キャスターが「申し訳ない気持ちになります」と言うと、知那美選手は「大丈夫です、チームなので。もう1回やりましょう!」
2投目は転倒しながらも、ストーンがスピードを保ち続け、スウィープの一押しもあって見事にハウスの中へ。二人は快心のハイタッチを交わしていた。
スタジオでは、あらためて5つのポイントをおさらい。知那美選手は、カーリングの魅力を「まず第一に戦略面、『置きたいところに置けない将棋』というところです。こうすれば絶対に勝つというセオリーは分かっているんですけれども、その一手を指すのは人間であり、とても不確実です。一手を指すのに長い時間のトレーニングが必要で、それをいかに簡単にやっているなと思わせるぐらいの高いスキルを見せられるかどうか」と語った。
「カーリング(のチーム構成)は、基本的に選抜ではなく4名固定。何があっても選手交代はせず、4人で3時間の試合を完結させる。どんなトラブルがあっても力を合わせて、その試合をどうにか勝ちに運んでいく。調子がいい選手もいれば悪い選手もいる中で、どういう風にチームとしてやっていくのかが、1つの人生みたいだなって」
番組の後半では、カーリングの戦略面を深掘りした。ルールの中で、知那美選手が「ゲーム性を高くする肝」と語るのが、得点したチームが次のエンドでは先攻になること。「ラストストーンアドバンテージという言葉があるように、エンドの最後にストーンを投げられることは、相手チームの配置が出そろったうえで最適解を投げることができるので、後攻チームは得点しやすく複数点を取りれやすい」と言う。
したがって、先攻チームは相手に1ポイントだけ取らせて次は後攻になる、後攻チームは2ポイント以上を狙うのが、セオリーになっている。
それを踏まえて、日本選手権の1次予選リーグの中部電力戦を振り返り、第1・第2・第9エンドの攻防を解説した。詳しくは動画を見ていただきたいが、知那美選手の気になる発言はこちら。
「1エンド目はアイスの状況が分からず、一番難しい状況」
「相手の作戦通りかもしれないけれども、リスクを取らずにブランクでいい」
「勝ちに行くってなると、少しリスクを取ってでも攻めに行く」
「リスクを考えなくなったカーリング選手は怖い。ガシガシに攻めてきます」
「ラストエンド は先攻行後攻のアドバンテージが揺らぐ」
中部電力との試合の徹底分析は48:00から。
もう1試合クローズアップしたのは2次予選リーグのフォルティウスとの一戦。最終エンドは、2点リードされて負けパターンの状態で迎えた。ロコ・ソラーレのスキップ藤澤五月選手の14投目は、針の穴を通すコントロールで相手の石をはじき出し、3点を取れる位置に。相手にプレッシャーを与えて、そのまま逆転勝ちを収めた。
ミラクルショットを繰り出した藤澤選手について、知那美選手は「10年間バディとして隣にいるんですけれど、説明がつかないというところからしても、本当にシンプルに天才なんだなこの人は、と思います」と語った。
これまでに数多くの逆転劇を演じたチームを、 知那美選手は「ゾンビ」にたとえる。「私たちは負けにも誇りを持っていますし、負けがなかったら強くなることやタイトルを獲ることは絶対にできなかった。それは試合中も同じように、一投の失敗でどれだけの情報を得られるかを常に考えながらやっています」
最後に、ロコ・ソラーレが導入した新兵器である、コロコロ(粘着クリーナー)を紹介。ゴミがストーンに絡まないように、日本選手権では5番目の選手である松澤弥子選手がチームメイトのユニフォームを掃除する「コロコロタイム」が見られた。今回の番組出演でも、持参したコロコロが意外な形で活躍したそうだ。
駆け引きの詳細な解説中、 知那美選手は「生徒の皆さんついてきていますか? 大丈夫かな」と心配していたが、視聴者からは「分かりやすい」「奥が深い」と好評だった。
知那美選手からは「授業は1回だけじゃないかもしれません」と、再登場を匂わせる発言も。第2弾や第3弾の実現も楽しみにしたい。見たいのはもちろん、金メダルの試合のセルフ解説だ!
毎週金曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。次回(2025年2月21日)は、Jリーグ開幕を迎えた名古屋グランパスを特集する。沖縄で行われた合宿を取材し、今季から新しく加わった選手たちにも話を聞いた。ゲストはグランパスファミリーを代表して陸上長距離部の服部勇馬選手が出演する予定。ぜひ、お見逃しなく!
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