2025/06/18
6月13日のトヨタイムズスポーツは、「S耐富士」「ニュルブルクリンク」と2つの24時間耐久レースを特集した。
6月21~22日にドイツで開催されるニュル24時間に、TOYOTA GAZOO ROOKIE Racing(TG-RR)が次世代変速機のDATを搭載したGRヤリスで参戦。コロナ禍による空白期間を経て、国内のスーパー耐久(S耐)で鍛えられたクルマと人が、6年ぶりに“新車開発の聖地”へと戻ってくる。
S耐からニュルへの道は、どうつながっていくのだろうか? 「道がクルマを鍛え、人を鍛える」という言葉の意味をあらためて考えた放送から、ドライバーやエンジニアら関係者の証言をピックアップした。
5月31日~6月1日に行われたS耐第3戦・富士24時間に、TOYOTA GAZOO RacingとROOKIE RacingがワンチームとなったTG-RRで臨み、その体制でニュル24時間にも挑む。
ニュルブルクリンクへの6年ぶりの帰還は、もっといいクルマづくりへの原点回帰をする舞台でもある。それを象徴するのが、モリゾウ選手こと豊田章男会長の言葉だ。モリゾウが語ったヒントは7:59から。
モリゾウ「若いメンバーをはじめ、原点であるニュルってこういう感じだったよという再スタート。僕が初めてニュルに行った時のような体験を、多くの人が今年やってくれて、みんなそれぞれが考える。考えただけの答えはあるかもしれない。S耐の活動がニュルに通じている、という風に。だけど、ここ(富士)ではできないことがニュルにはある。両方合わせることによって、“モータースポーツを起点にしたもっといいクルマづくり”というものを考えなさいと。いちいち答えは聞かない。みんなが考える」
今年の富士24時間の生中継には、レースの合間を縫ってドライバーが多数出演。クルマが鍛えられる最前線で今まさに実感している本音が、それぞれの言葉に込められていた。VTRは10:38から。
水素エンジンカローラに乗った佐々木雅弘選手「昨年は燃費を伸ばすために、ブレーキングポイントのはるか手前からアクセルオフをして、なおかつ無駄なアクセルを踏まなかったりで、(1回の給水素・充填で)ギリギリ30周を達成したんですよ。 今回はタイムを出すトライをしながらずっと攻め続けた中での31周なので、内容としては全く違う。これは大きな進化だと思います」
ジェントルマンドライバーの鵜飼龍太選手「プロドライバーから社員のドライバーもいますので、同じサーキットを走っているんですけど、人も違えば走っている時間や(周囲の)他の車も違います。そういったシーンの中で、いろんなデータをしっかり蓄積して改善に結びつける」
夫婦で参戦した坪井翔選手「(富士24時間では妻の斎藤愛未選手と)同じクルマに乗っているので、(データを収集する)ロガーとかも共有しやすいです。開発という意味では、僕ら男性では気づかないところ、女性ならではの悩みみたいなコメントが出てきているというのは感じますね 」
モリゾウたちの耐久レースへの挑戦を長年見守ってきたジャーナリストたちも富士24時間の番組内で、今回のニュルへの帰還について感慨深く語っていた。コメントは14:54から。
自動車研究家 山本シンヤ氏「最初ニュルだけだったのが、S耐があってニュルがあるっていう次のパターンに来ているのかなって。
もっといいクルマを作るのは人じゃないですか。だから人を育てるためには、モータースポーツの場にいるのはものすごく大きいこと。たぶん今までのトヨタの人って、『クルマが大好きです』と言うのはなんか恥ずかしいとか言っちゃいけないみたいな風潮があったんですよ。でもモリゾウさんがそこのマインドチェンジをして、『クルマが好きなんだ』とちゃんと言えるトヨタになれたのはデカいと思いますよ。
章男さんは、利益の先みたいなところを見ていた。(商品の)先にはやっぱり人がいる。人に喜んでもらうって何だろうという、まさに『自分以外の誰かのために』というところの気持ちを、みんなに伝えたかった。それをモータースポーツが一番わかりやすく表現できたのかなという気がしています。
文化なんですよね、クルマって。ものづくりも見ることも運転することも、全部が文化になって初めて、S耐24 時間が楽しいよねと言える」
自動車ジャーナリスト 今井優杏氏「もっと前からクルマのレースって、技術開発の場なんですよ。
それがいつしか、公害であったり排出ガス問題であったりとつながってしまって、企業の皆さんがモータースポーツやっていますというのが恥ずかしくなってしまう時代があったんですね。でもそうじゃない。モータースポーツの本当の現場って、人が鍛えられてクルマも鍛えられて、タイヤメーカーもパーツメーカーも燃料も鍛えられる場なんですよ。
そこに光を当てたのがモリゾウさんで、それに賛同するレーシングドライバー。他ならぬ世界第 1 位の自動車メーカーの社長(当時)が大きな石を投じたことが、大きな意義だった。世界を変えたと私は思っています」
続いて紹介したのが、今回ニュルを走るGRヤリスDATを追った約20分のVTR(21:30 から)。
国内でのテストから、かつてのニュルを知るベテランと若手が融合したチームで臨んだ。メカニック、エンジニア、ドライバーは、三位一体となってクルマを鍛え上げていった。
石浦宏明選手「路面側のグリップが、日本は全サーキット高いんです。そこにクルマを合わせちゃうと、ニュルに持っていくとズレている。僕らはどうしても国内のサーキットのことばかり考えちゃうんですけど、ニュルを目指しておいた方がより広い視点でクルマを開発できるんじゃないかな」
豊田大輔選手「走っている時に認知が遅れると、判断が遅れて操作も遅れる。認知がいかに早くできるかが大事。目で見る景色と、走っている時に感じる触感。最初の(ハンドルを)切っている範囲が早くわかるほど適切な量を切れるし、切りすぎたとしても適切に戻せる。昨日はそれがあまりわからなかったんですけど、それがちょっとわかるクルマになりました」
関谷利之GM「試合で活躍する選手って、ものすごい練習をしているんですね。全く同じことがモータースポーツにも言えて、サーキットは準備してきたものを試しにくる場。それ以外はやっぱり練習場があり、それがガレージ。ガレージを見ていただくと、泥臭いことを一生懸命やっていますよ。
メカニックは“ドラえもん”ですよね。彼ら(ドライバーやエンジニア)のやりたいことを、より精度良くかなえてあげる、というところ。試したいことや、技術的にもそうですし。“ドラえもん”になれるかなという」
南剛史チーフメカニック「国内テストも終わって、スタート地点に立てるのかなというところです。去年とまたひと味違ったクルマになっていると思うので、やるぞっていう気持ち。長くもあり辛くもありましたが、ようやく行けるなというところに来たので、これからが楽しみですね」
モリゾウ「テストの方が本番よりも僕は大切だと思います。こういうテストで想像力を生かして、どんな場面でもびっくりしない。『あれやったよね』『こういう経験あるよね』ということが一番大きい。GRがどんどん大きくなる中で、初めのニュルの原点が忘れられてるというか、思い出す必要性もあるのかなとルーキーレーシングを作りました。そして当初のニュル参戦のような活動をもう1回感じてもらい、技能のみならず気持ちの伝承をしていきたいと思っています。大事なことは“ひとりではクルマは作れない”ということです」
国内でのテストを終えた4月、GRヤリスDATが挑んだのは、ニュルブルクリンクでの4時間耐久レース。ニュル24時間の前哨戦は、大きなトラブルもなく完走することができた。
大嶋和也選手「日本でいろいろ想定して持ってきたものが、全て思い通りというわけではなかったので、まだまだ煮詰めなければと思っています。走るたびにいろいろ改善してくれていて、良いところも悪いところも見れている」
久富圭エンジニアリーダー「メカニックをはじめエンジニアの皆さんがしっかりとサポートしていただけたので、4 時間走りできることができたと思います。国内のサーキットで走っても出てこないようなトラブルがいっぱい出てくるので、諦めずにトライし続けることが大切。どんなことが起きたとしても、まずはちゃんと受け止めて冷静に対応しようと心掛けました。
(DATは)コースによって向き不向きはあると思います。ただ、DATだからできないと諦めるわけではなくて。ドライバーが何を思ってどういうトルクが欲しいのかを、もう少しクルマ側が察知できて的確に合わせられるようなシステムやソフトを、いろいろと見直して いきたいと思います」
DATとは「ダイレクト・オートマチック・トランスミッション」の略。MT(マニュアル)と同じような最適なシフトチェンジを可能にすることができ、モータースポーツやドライビングの可能性を広げることが期待される。モリゾウも「ゲームチェンジャー」と表現している。
新型のGRヤリスにも搭載されているDATは、2022年からラリーの現場で鍛えられてきた。23年からはS耐にも挑戦しており、ニュルブルクリンクで新たなデータを取得することで、さらなる進化を遂げることになる。
ニュルをよく知る脇阪寿一さんや、富士24時間レースで104号車のGRヤリスDATに乗ったドライバーによる、最後の証言は45:14から。
脇阪寿一 TGR TEAM SARD監督「オートマって運転して楽ですよね。でも、スポーツドライビングには物足りないと感じる人たちもいる。要は、サーキットでスポーツドライブもできるし、移動としてもそのまま使えるという、両方のいいとこ取りをした夢のクルマなので」
鵜飼龍太選手「性能的にはMTと同じレーシングスピードでサーキットで走れますし、2ペダルのATで運転に集中しながら走れるというのは、本当に今までなかったこと」
山下健太選手「DATは自分が何もしなくても勝手にギアを選んでくれて、シフトアップもシフトダウンも適切なところでしてくれる。耐久レースの中だと、逆に自分たちにとってはヒマだなというぐらいなんですけど。経験のない方が乗る時には、ドライビングの余裕につながったりするので、非常にいいシステムだと思います。サーキットで最後のコンマ数秒を狙っていこうとすると、まだ自分で操作した方が早い箇所もあるので、そういうところをレースに参戦しながら少しずつ詰めているところです」
6年越しの想いや、新たに挑戦する想い。
さまざまな人々の想いが込められ、そして多くの人を鍛えるニュルブルクリンク24時間レースは、いよいよ6月21日深夜(日本時間)にスタートする。
トヨタイムズはもちろん、YouTubeで24時間生配信を敢行!
毎週金曜日のレギュラー放送でも、20日19時から直前スペシャルを現地からお届けする。一人ひとりが「道がクルマを鍛える」を考えた先に、どのような答えが待っているのか。視聴者の方々のコメントもお待ちしている。ぜひ、お見逃しなく!
6/20(金)19時~ 直前スペシャル https://www.youtube.com/live/ccDmB2mEeOw
6/21(土)22時~ 24時間中継① https://www.youtube.com/live/ft-UBcqHlpc
6/21(土)7時~URL切り替え 24時間中継② https://www.youtube.com/live/jjWFfmxo5CQ
6/22(日)16時~URL切り替え 24時間中継③ https://www.youtube.com/live/_EwsMb6iZAM
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