2025/08/20

「音のない世界」でのバトル! 東京2025デフリンピックが開幕カウントダウン


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8月8日のトヨタイムズスポーツは、聴覚障がいのある選手による4年に一度の国際大会「東京2025デフリンピック」を特集した。

11月15日の開幕まであと99日に迫り、卓球の川口功人(こうと)選手がスタジオゲスト、円盤投の湯上剛輝選手がVTRで出演。音がない世界で繰り広げられる競技の魅力や、大会の概要などを紹介したほか、会場での応援方法やコミュニケーションの際のポイントも学んだ。

川口選手のハリウッド映画出演というニュースも飛び込み、ますます注目度が高まるデフスポーツを予習しよう!

日本初開催「デフリンピック」とは


デフ(Deaf)とは、「耳が聴こえない」「耳が聴こえにくい」という意味。聴覚に障がいのある人たちのスポーツを「デフスポーツ」と呼び、「デフリンピック」は、1924年にパリで第1回大会が開催されて以来、100年以上の歴史を持つ。

デフリンピックの特徴は、選手たちの日常生活をカバーしている補聴器や人工内耳を外して競技を行うこと。音による情報がなく、チームメイトの声や歓声が聴こえない中で選手たちは戦っている。

日本で初開催となる「東京2025デフリンピック」は、11月15日から26日まで、約80の国と地域から約3千人の選手が参加。21の競技が行われ、陸上や卓球のほか、オリエンテーリングやボウリングも実施される。トヨタは大会を「トータルサポートメンバー」として全力で応援している。

番組では湯上選手を特集したことがあるが、デフスポーツとしてクローズアップするのは初めて。音のない世界での戦いを多くの人に知ってもらうと同時に、聴覚障がいのある人たちにも楽しんでもらうため、今回は手話通訳付きで放送した。

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バレーとバスケにもトヨタアスリート


放送前日の8月7日には、デフリンピック開催100日前の記念イベントが東京・二子玉川で開催された。手話や競技の体験コーナーなどが設けられ、親子連れなどが楽しむ中、トヨタのデフアスリートとして参加していたバスケットボールの加藤亮太選手とバレーボールの安田晃斗選手に話を聞いた。

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「自分は補聴器を付けると聞こえるんですけど、スポーツをする時はアイコンタクトや身ぶりでコミュニケーションを取ります。音のない世界でも楽しくできています」と、元町工場に勤務する安田選手。バレーボールの連携は、選手間であらかじめサインを決めているそうだ。

本社工場で働く加藤選手は「全く聴こえないと、周りをめっちゃ見てプレーをしています。日本で初の大会でたくさんの方が見られるので、皆さんの期待に応えられるように頑張っていきたいと思います」と話していた。

イベントの模様と2人の談話は19:43から。

(小見出し)銅メダリスト川口功人の練習方法

イベントにも参加していたゲストの川口選手は、中学から卓球を始め、初の大きな国際大会となった2022年のブラジルデフリンピックで男子団体の銅メダルを獲得。東京大会への出場も内定している。

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卓球の試合で打球音は大きな判断材料となるが、デフの選手はそれが聴こえない。

川口選手は「目で見てやるのがすごく大変です。特に変わった練習はないんですけど、失敗した時に同じ球を出してもらって、できるところまでしっかりやっています。映像を見たり、一般のトヨタの卓球部の選手からもアドバイスをいただいています」と語った。

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メダルを獲得したブラジル大会の印象を「ドキドキワクワク。世界中のデフの選手と試合ができるんだって、今でも覚えています」と話す川口選手。「普段から残業もなしで練習をやらせてもらったり、大会前には激励会を開いてくれて、職場の方から応援してもらっています。会うたびに皆さんから『(東京大会の)応援に行く』と声を掛けていただき、本当にうれしいです」と周囲に感謝していた。

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トヨタイムズがハリウッド出演のきっかけ?


番組の終盤では、川口選手がハリウッド映画に出演するという大ニュースを紹介。森田京之介キャスターが「あのハリウッドですよね」と念を押すと、川口選手は「はい、そうです」と恥ずかしそうに答えた。

映画はティモシー・シャラメ主演の「Marty Supreme」で、12月25日にアメリカで公開予定。マーティという米国の卓球選手の実話に基づくストーリーで、川口選手は別の選手役を演じた。ニューヨークなどで撮影は終わっているという。

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「トヨタタイムズスポーツのインタビューの動画を観た監督からオファーがありました」と川口選手が出演の経緯を語ると、森田キャスターは本人に何度も確認し、「トヨタイムズスポーツが間に入って、ハリウッドに影響している」と声を大にしていた。

川口選手が「自分でもびっくりしています。本当にすごくいい経験になりました」と語った、ハリウッド映画出演の話題は48:48から。

湯上剛輝「聴覚障がいの人たちのヒーローになりたい」


円盤投の湯上選手は米国オクラホマで練習中で、VTRでの出演となった。初出場となった2017年の大会で銀メダルを獲り、前回大会はチームでコロナが発生したため辞退するという悔しさを味わい、「ブラジルでできなかった金メダル獲得をできる最高の舞台じゃないかと、気持ちを切り替えて前向きに進むことができました」と語る。

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健聴者の大会でも活躍する湯上選手は、今年春に日本新記録を更新し、デフリンピックの前に世界陸上が控えている。「世界陸上はどちらかというと、自分の競技力の高みを目指していくものですけど。僕にとってデフリンピックは、同じような聴覚障がいの人たちの希望になりたい、ヒーローになりたいという気持ちで臨みます」と、両大会の違いを説明していた。

「デフリンピックを通して、たとえ声を大きくするだけでは伝わらないよとか、そういった些細なことでも理解が深まっていけばいいなと思っています。聴覚障がいがあっても大丈夫だということを伝えていきたいですし、偏見や誤解を減らしていく社会につながっていったら」

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湯上選手へのインタビューは37:22から。

選手の応援や話す際のポイント


番組では、聴覚障がいのある人とコミュニケーションする際の2つのポイントについて、川口選手と湯上選手に聞いた。1つは、必要なのは音の大きさではなく、音が明瞭なことや周りが静かなこと、口の動きをしっかり見せること。もう1つは、音の方向をわかりやすくするために、正面に立ったり肩をたたいたりすることだ。

そのうえで、デフリンピックでの応援方法について、湯上選手は身ぶり手ぶりで体を動かしながら応援することを推奨。川口選手は「頑張れ」という手話をレクチャーし、視聴者からのリクエストに応えて「だいじょうぶ」と励ますための手話も披露した。

聴覚障がいは、補聴器や人工内耳が気づかれないために理解されにくいという現状がある。川口選手は「健聴者も聴覚障害者もお互いに言い合える環境になったら、いい雰囲気になるんじゃないかなと思います」と話していた。

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聴こえないからこその強みもある


デフリンピックの開催は、社会が聴覚障がいへの理解を進めるための大きな一歩となる。

森田キャスターは番組の冒頭で「初めてパラリンピックをお伝えした時、ほとんど知識のなかった私は、どういう言葉で伝えたらいいのかすごく迷った記憶があります。そこで、当事者であるパラアスリートの皆さんにいろんなことを教えてもらったら、スポーツの魅力がたくさん詰まった世界が広がっていました。だから、私は確信しています。デフリンピックがスポーツの楽しさをもっと教えてくれるんじゃないかと。今回のデフリンピック、せっかく日本でやるわけですから、その世界に触れて楽しまないと損じゃないかなと思います」と考えを述べた。

ハンデばかり語られがちな聴覚障がいだが、選手たちはけっしてそれを悲観的には考えていない。湯上選手は、自身の競技において「音が聴こえないということは、雑音が聴こえないということですので、自分が集中しやすい環境を作れる」。川口選手は普段の仕事で「聴こえない分、周りを見て『今大変そうだな』と助けに行ったりとか、そういうのが自分の強みでもあります」と語る。

個性を強さに変えた選手たちの、音のない世界での戦いをしっかりと見届けたい。

毎週金曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。夏休みを1週いただいて次回(2025年8月22日)は、外洋ヨットレースの高原奈穂選手を特集する。7月にトヨタアスリートに加わった高原選手をスタジオに迎え、過酷な外洋ヨットレースの概要や魅力、なぜ挑戦しようと思ったのかなどをたっぷり聞く。ぜひ、お見逃しなく!

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