2025/09/03

悔しい初戦敗退! 都市対抗野球3連覇に挑み続けるチームが得た教訓と感謝


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優勝候補のチームがあまりにも悔しい逆転負けを喫した。

第96回都市対抗野球大会に臨んだ硬式野球部トヨタレッドクルーザーズは、8月30日の初戦を3-5で敗退。王座奪還は叶わず、日本選手権からの秋夏連覇も逃した。

結果は取り戻せないが、応援してくれた人たちへの感謝の気持ちは、次に向けてのパワーに変わるはず。トヨタイムズスポーツで生中継したJR東日本東北との1回戦の動画と、前日に配信した直前特集から試合を振り返る。

延長10回、タイブレークでの結末


最後の打者はダブルプレー。わずか5球でスリーアウトとなり、東京ドームの三塁側スタンドも放送席も放心状態のまま試合終了を迎えた。

3-3の同点で9回を終え、無死一二塁からのタイブレーク方式となる延長10回に突入。先攻のJR東日本東北は送りバントでランナーを進め、前進守備のセカンドの頭を越える2点タイムリー。8回から好リリーフを見せていた嘉陽宗一郎投手が許した唯一のヒットだった。

相手がタイブレークの理想的な形で得点したのに対して、レッドクルーザーズはランナーを生かすことができず。対照的な結末となってしまった。

それでも、3回・5回・6回に、1点ずつ得点。2アウトからタイムリーを放ったのは、前キャプテンの北村祥治選手、副キャプテンの福井章吾選手、そして現在のキャプテン逢澤崚介選手と、中心的な選手たちが役割を果たした。

3点目のタイムリーヒットを放つ逢澤崚介選手

3点目のタイムリーヒットを放つ逢澤崚介選手

試合後に涙を流していた逢澤選手は、インタビューで「畳み掛けられるところを畳み掛けないと、都市対抗はこうやってひっくり返される。1球の厳しさをあらためて感じました」と話していた。

見事な投球も、悔しさ残る増居翔太


7回までは、完全にレッドクルーザーズのペースだった。試合を支配したのは、エース増居翔太投手。昨年の日本選手権を制した立役者としてMVPに輝いた左腕は、「負けるまで切らない」と宣言していた後ろ髪をなびかせ、熱の入った投球を見せた。

昨年準優勝したJR東日本東北の強力打線を4回までノーヒットに封じ、5回は連打を許しピンチを迎えた。レフト前にヒットを打たれたが、徳本健太朗選手が渾身のバックホームを見せて走者を本塁で刺し、流れを引き戻す。増居投手は事前のインタビューで「勝負どころの集中力は意識してやってきた」と話していた通り、要所をきっちりと締めた。

勝負どころの集中力で好投を見せた増居翔太投手

勝負どころの集中力で好投を見せた増居翔太投手

そして8回。連打を許したところで球数も100を超え、1死二三塁の場面で投手交代を告げられた。マウンドを降りる増居投手は悔しそうな表情で、エースとしての自覚と成長を感じさせた。

その直後に同点に追いつかれ、延長戦では一昨年の都市対抗の橋戸賞(MVP)の嘉陽宗一郎投手も勝ち越しを許した。強力な左右のエースを揃え、優勝候補の筆頭に挙げられていたレッドクルーザーズだったが、一発勝負の都市対抗ではわずかなスキも許されなかった。

今回は池村健太郎投手ら若手は、残念ながら登板する機会がなかった。今秋の日本選手権や来年の都市対抗での活躍を期待したい。

池村健太郎選手の初戦直前インタビューはコチラ

レジェンド佐竹功年が敗れたチームにエール


試合を見守っていたのが、レッドクルーザーズに19年在籍した社会人野球のレジェンド、佐竹功年さん。現在は副部長を務め、チケットなどの事務局業務で忙しい中、7回からゲスト解説者として放送席に駆け付けた。

チームの精神的支柱だった佐竹さんが昨年に引退した影響について、藤原航平監督は事前のインタビューで、「正直言うとそんなにないと思っています。ただ、これは佐竹の現役の時からの効果だと思っています。影響がないよう に、選手の声掛けとか、日々の練習・行動も含めて、佐竹が残していったもの」と語っていた。

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長年いたベンチを離れて外から試合を観戦した佐竹さんは、ピッチャーの心理やキャッチャーのリードなどをきめ細かく解説。ときには愛のあるダメ出しを交えながら、敗れたチームにエールを送っていた。

「ここで勝つことを目標に1年間やってきたのに、結果が出なかったというところで、トヨタの選手はこれが今の自分たちの実力だというのを、いま一度感じるしかない。もう1点取るためにどうするんだ、あそこをアウトにするためにどうするんだ、牽制でアウトにならないようにどうするんだというところを、これからまた一人ひとりが積み重ねていって、日本選手権や来年の都市対抗へ向かっていくと思っています」

豊田会長からのメッセージ「感謝を忘れずに」


レフト側フェンス上部の「リボンビジョン」には、毎年恒例となっている豊田章男会長からのメッセージが映し出された。今年の言葉は「野球部のみんなへ、応援してくれる豊田市の皆さんへ感謝を忘れずにプレーしなさい!」だった。

2回以降は、選手自身からのメッセージが流された。職場や寮の関係者、トヨタアスリートサポートセンター(TASC)や指導している少年野球チームなど、普段からお世話になっている人々への感謝の想いが大きく表示され、赤く染まった応援席を盛り上げていた。

試合後に佐竹さんは「今日これだけのたくさんの方に応援に来ていただいたことを忘れてほしくない。勝って恩返しをするというのが彼らの仕事」と語った。

社会人野球の2大大会のどちらかを制する“4年連続日本一”は、まだ可能性が残されている。秋の日本選手権は、最速で恩返しをするチャンスだ。

直前特集の見どころ


試合前日に配信された8月29日のレギュラー放送では、チームOBの佐竹さんと竹内大助さんをゲストに迎え、予選での戦いぶりや、藤原監督や選手たちのインタビューを紹介している。佐竹さんからの応援グッズの紹介や、広報担当の高橋優さんへの生電話)も見どころだ。

ちなみに、昨年まで高橋さんが行っていた試合前の声出し「Yu-Voice」は、今回は新人の西村友哉選手が担当。マスコットの「クルーガーくん」が等身大の姿でお披露目されるなど、新戦力の駒も揃ってきた。

パラバドミントン梶原大暉がストライク始球式


都市対抗の初戦を、出場選手以上に緊張して迎えていたアスリートがいる。パラバドミントンの梶原大暉選手。東京とパリのパラリンピックを連覇し、現在も152連勝を続けている絶対王者だ。

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梶原選手が挑んだのは、試合前の始球式。野球少年だった梶原選手は、13歳の時に交通事故で右足の膝から下を失う以前は、地元の強豪チームでエースとして活躍していた。今回はトヨタイムズスポーツの新年特番をきっかけに、レッドクルーザーズの選手たちとの交流を経て、憧れの東京ドームでピッチングを披露することになった。

始球式で力強いボールを投げ込んだパラバドミントン梶原大暉選手

始球式で力強いボールを投げ込んだパラバドミントン梶原大暉選手

車いすに座ったまま力強く投じられた一球は、見事なストライク。金メダリストの速球にスタンドがどよめいた。梶原選手は「貴重な経験をさせていただきました。なんとか野球部の皆さんにいい流れをつなぎたいなと思って」と、大役を終えてホッとしていた。

チームから梶原選手にプレゼントされたグラブには、「三連覇」の文字が刺しゅうされている。レッドクルーザーズの「都市対抗3連覇」と、梶原選手の「パラリンピック3連覇」という共通の目標を示したものだ。

梶原選手が3連覇を目指すロサンゼルス大会は2028年。レッドクルーザーズの3連覇は仕切り直しとなったが、来年から勝ち続ければ同時に3連覇を果たすことになる。悔しさを糧に、圧倒的な強さで都市対抗を勝ち進む未来に期待したい。

トヨタイムズスポーツは毎週金曜日11:50から、週イチLIVE(レギュラー放送)をYouTubeで生配信している。次回(2025年9月5日)の特集は「佐藤圭太とギソクの図書館」。リオ2016パラリンピックの400mリレー銅メダリストである佐藤圭太さんの一言がきっかけで始まった、NPO法人の活動を取材した。義足で生活する人が競技用義足で思い切り走れる環境をつくる取り組みや、体験者の反応などを紹介する。ぜひ、お見逃しなく!

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