2025/03/18

宇野昌磨 第2章 「仲間と創る」アイスショーを初プロデュース


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元世界王者の第2章が動き出す――。

オリンピック2大会で計3つのメダルを獲得、2022、23年の世界選手権を連覇するなど、男子フィギュアスケート界で一時代を築いた宇野昌磨。

24年5月に競技の道を引退した後は、プロフィギュアスケーターとして国内外のアイスショーに出演していたが、今回初めて自身でショーを企画・プロデュースする。

果たしてどのような舞台になるのか、プロデュースするにあたっての想いは?

トヨタイムズスポーツは19日、特別生放送を実施した。

ダラダラ…ゴロゴロ…だけじゃなかった2024年


宇野がトヨタイムズスポーツに出演するのは、24年6月26日以来(12月13日放送の社内駅伝回で聖火ランナーとして登場しているが、このときは映像のみ)。トヨタアスリートの引退後のキャリアを考えようという企画で、OB・OG、現役選手に引退直後の宇野も加えて、座談会の模様をお届けした。

引退時の会見では「これからも(プロとして)スケートに全力で取り組むことは変わらない」、「次に熱量を注ぐ場所を探していきたい」と語っていたが、このときの放送では「部屋でダラダラ・ゴロゴロって感じが主なセカンドキャリアです」と飾らない姿も見せてくれた。

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実際にはスイスや東京などでアイスショーに出演していたが、現役時代と比べるとゆっくりできる時間は多かったようだ。

トヨタとは、アスリートとのバーベキュー大会や、女子バスケ“アンテロープス”の試合で始球式に参加、社内駅伝では聖火ランナーを務めたりと、実はいろいろと交流を続けてくれていた。

トヨタアスリートとバレーボールを楽しむ宇野(左)

トヨタアスリートとバレーボールを楽しむ宇野(左)

そしていよいよ今回の生放送…の1週間前、トヨタイムズの公式Xで告知すると多くの反響が集まった。

愛知県内で行われた会場には22社のメディアが集まり、トヨタイムズスポーツのYouTubeチャンネルの最大同時接続数は3,231。多くの注目が集まる中、率直な想いを語ってくれた。

Ice Brave


宇野

この度、新しいアイスショーをプロデューサー兼メインの演者としてやらせていただくことになりました。

「Ice Brave」というタイトルでつくらせていただきます。

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本格的に動き始めたのは24年の10月ごろ。今も試行錯誤しながら練習に打ち込んでいるという。

この「Brave」には“勇敢な”、“勇ましい”といった意味がある。宇野は、「タイトルを付けるのは本当に難しかった」と振り返りつつ、「僕の強みは、気持ちを前に強く出していくこと」と現役時代のイメージから選定したことを説明した。

気になる内容については、2曲を除いて現役時代に使っていた十数曲(エキシビション含む)で構成されている。競技者時代から宇野を応援してくれた人への感謝と、引退後の変化を見せたいという想いが込められている。

現役時代との違いは?


宇野がメインスケーターであることは変わらないが、会見では、観客も含めて一緒にこのショーをつくり上げていくことを強調した。

宇野

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僕一人では、僕が思い描く素晴らしいショーはつくれません。僕が得意な分野もあれば不得意なところもあります。タイトルを付けるのもそうです。

たくさんの人の協力を得て、素晴らしいものにすることを、このショーの色にしたいと思っています。

試合もたくさんのお客さんがいて、拍手も嬉しかったです。

ですがショーは、会場に足を運んでくださった皆さんが楽しんで、自然とボルテージが高まって、一緒に盛り上がってくれて、初めて大成功と言えるんじゃないかと思っています。

ぜひ会場で声援や拍手を送ってほしい。一緒に盛り上がって、素晴らしいショーをつくっていきたい。僕からのお願いです。

宇野は、引退前のトヨタイムズのインタビューでは「点数になりにくい部分を⼀⽣懸命練習してもそこは⾃⼰満⾜の世界。でもその先にフィギュアスケートに何が起こるのか見てみたい」と語っていた。

競技者として世界を制した演目を、競技の場を離れた今、改めて再構成して演じることについて、宇野自身も楽しみにしている。

宇野

今までは一人で滑ることが主だったんですが、アイスショーだと規定が無いので、みんなと滑る楽しさをすごく感じています。

もちろんソロナンバーもありますが、新しい挑戦をたくさん入れ込んでいます。新たな挑戦だったので「大丈夫かな」と思うこともありましたが、今は後ろを振り返らず前進している最中です。

(現役時代)できていなかった、課題だと感じていたことに、ようやく取り組めています。自分が想像する満足いくスケーター像に向けて動き出せたなと思っています。

皆さん(本番の)6月まで、まだ時間があると思っているかもしれませんが、僕は無いと思っていて、いろいろなことを糧にしたい。

現役を退き、自由に表現できるようになったことで、スケーターとしては、一層貪欲になれたようだ。「僕が小さいころに憧れた、高橋大輔さんのようなスケーターになれているかというと、まだ満足していない」とも語った。

今は練習が長時間に及んでも「もっとやりたい」という宇野。さらに「そこにみんなが付いてきてくれるのが、いい仲間だなと思います」と続けた。

練習の様子を少しだけ


宇野が会見中何度も言葉に出した「仲間」。

今回のアイスショーには、宇野以外に、現役・元含めて6人のスケーターが出演する。

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選出理由は「一緒に同じ方向を見て走ってくれそうな人。あと仲がいい人(笑)」。このメンバーと取り組む練習の様子を、森田京之介キャスターが取材した。

今回、ダンス要素を取り入れることも初めての挑戦。「氷上とは感覚が違って大変でしたけど楽しい」。練習にも熱がこもる。実は本番に向けて、もう一つ挑戦中のことがあるらしい。これについては「これはまだお楽しみということで」。本番までまだまだ楽しませてくれそうだ。

仲間の話に戻って、プロデュースする立場として、共演者にアドバイスを送ることも。その中で新たな気づきもあった。

宇野

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教えるために言語化することで、「こうやっていたんだな」という新発見があります。

教えるということが自分の成長にもつながるんだなと思いました。

それも、「『Ice Brave』を素晴らしいものにしたい」という想いを、みんなが共有しているからこそ、自然と教えるという流れになりました。

今までは教えることに、(自分の中で)ハードルがありましたが、「(アイスショーを)より良いものにしようよ」ということで、みんなで取り組めています。

一方共演する仲間は、宇野をどう見ているのか? 先ほど紹介した練習に一緒に取り組んでいた、櫛田 一樹さん、中野 耀司さん、唐川 常人選手に聞いた。

「練習から120%」の言葉には宇野も思わず苦笑い。ただ「みんなで一緒につくっていくという気持ちが伝わっていて嬉しい」と受け止めた。

宇野の不安


そして共演者のもう一人、今回のゲストスケーターで、宇野が師事したステファン・ランビエール氏について語った一幕にも触れたい。会見では宇野にはサプライズでメッセージが紹介された。

映像を見届けた宇野だったが、「このショーで一番不安なこと」がランビエール氏だという。今回のショーはボリュームも多く、映像にもあるようにランビエール氏はラトビアに滞在中で練習にもなかなか参加できていない。

何より「彼も僕と同じで適当なところがあるので…」とポツリ。2人のこれまでの関係性が伺えた。

自分以外の誰かのために


自身の演技だけでなく、仲間とともに観客を魅了する舞台をつくり上げていく。

そんな新たな挑戦を始めた姿を、現役時代、好成績を収めた際にはともに喜び、不調のときには声をかけていたこともあったという、この人はどう感じているのだろうか。

「自分以外の誰かの価値を高めてあげる」

“座長”としての心構えを説かれた宇野は、一切視線を動かすことなくモニターを見つめ、心に刻むように聞き入っていた。VTRが終わると、「自分だけじゃなく、支えてくれる人、観に来てくれる人にとって価値ある時間にしたい」と応えていた。

「お客さんが楽しんでいる様子を感じ取れたとき、このショーは完成すると思います。ぜひ一緒に盛り上がってほしい」と呼びかけた宇野。

競技の世界を離れ、表現者としてフィギュアスケートと向き合うようになった今、私たちにどのような世界を見せてくれるのだろうか。

アイスショーは6月14日、宇野の地元・愛知公演を皮切りに、全国3カ所、計9公演行われる。

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なお、トヨタイムズスポーツのYouTubeチャンネルでは、生放送を終えた直後の宇野に感想を聞いたショート動画も公開中。こちらも合わせてどうぞ。

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